情報漏えいのニュースが続くと、「どの会社でも防げないのか」「新しい攻撃が急に増えたのか」と感じるかもしれません。ただし、相次ぐ公表だけから、発生件数の増加率や、すべての事案に共通する原因までは判断できません。
この記事では、2026年10月19日時点で確認できる資料を参考に、漏えいが起きる経路と被害が広がる条件を説明します。個別企業の原因を推測せず、自社を見直すための仕組みとして考えます。
情報漏えいは、一種類の攻撃の名前ではない
情報漏えいは、情報が本来渡してはいけない相手へ渡るという結果です。その経路には、不正侵入、アカウントの悪用、公開設定の誤り、誤送信など、異なるものがあります。
そのため「ウイルス対策を入れたから大丈夫」「パスワードがあるから大丈夫」と、一つの対策だけで説明することはできません。どの入口を守る対策で、どの入口は別に確認する必要があるかを分けます。
例えば、正規のアカウントが悪用された場合、ログインできたことだけを見ていても異常に気づけないことがあります。利用者の確認に加え、その人が扱える情報の範囲と、利用の記録を考える必要があります。
見えている画面の裏にも、情報を出す入口がある
Webサイトやスマートフォンアプリは、裏側のサーバーと情報をやり取りしています。その窓口であるAPIに問題があると、見た目の画面が整っていても、情報を守れるとは限りません。
NICTは2026年10月13日、最近の事案に関して、アプリの解析を手がかりにサーバーへ攻撃する経路を注意喚起しました。AIによる脆弱性探索についても扱っています。ただし、これがすべての漏えい事案の原因という意味ではありません。NICTの注意喚起
企業側から見ると、公開画面だけを確認するのでは足りない理由がここにあります。開発・保守の担当者へ、データを返す処理、外部連携、アプリ内の情報も含めて確認しているかを聞くことができます。
一か所の問題が、広い情報へつながる場合がある
侵入の入口と、漏れた情報の範囲は同じではありません。例えば、ある担当者用の機能から入った後に、必要以上に広いデータへアクセスできる設計なら、被害が広がる可能性があります。
架空の例として、問い合わせ担当が全社員の情報まで閲覧できる状態を考えます。業務に不要なアクセスがあれば、そのアカウントを悪用されたときに影響する情報も広くなります。必要な権限と保有する情報を絞ることは、入口の対策とは別に、被害の範囲を考える作業です。
保有データを減らすときも、一律に削除するのではなく、業務や保存義務に必要な期間を確かめます。何のために、いつまで持つかが分からない情報を見つけることから始められます。
委託先や外部サービスも、情報の流れの一部になる
顧客情報を外部のシステムへ預けたり、保守会社へアクセスを許可したりすれば、その先も情報管理の対象です。自社のPCだけを見ていても、情報がどこで使われているかを把握できません。
IPAの2026年の脅威整理でも、サプライチェーンや委託先を狙う攻撃が扱われています。自社で防ぐ作業と、委託先へ確認する作業を分けることが必要です。IPA:10大脅威2026 解説書
例えば、契約終了後も保守用アカウントが残っていないか、障害や不正アクセスが起きた場合に誰へ連絡が来るか、調査に必要な記録を誰が確認できるかを把握します。外部サービスを使うこと自体が悪いのではなく、役割の境界を見えるようにする考え方です。
復旧できることと、漏えいを防げることは別
ランサム攻撃では、暗号化だけでなく、情報の窃取や暴露を使った脅迫もあります。IPA:10大脅威2026 解説書
バックアップから業務を戻せても、すでに外へ渡った情報を取り戻せるとは限りません。そのため、復旧の備えと、情報へのアクセスを制限する対策は、どちらか一方で代用できません。普段から記録を残し、異常を調べられることも、状況把握を助けます。
ニュースを、自社への三つの質問に変える
まず「自社では何が入口になるか」。次に「その入口から、どこまでの情報を扱えるか」。最後に「おかしな利用があったら、誰が何を見て気づくか」です。
「攻撃が高度化したから仕方がない」で終わらせず、入口・権限・保有情報・発見と対応に分けて考えることで、担当者や支援先へ確認すべき内容が具体的になります。被害の報道は、自社の構成と照らし合わせるための材料として読むことができます。
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